通行証

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国の豊かさを反映したような豪華絢爛な宮殿。 宮廷では、王の寵愛にあずかろうと、昼夜を問わず、いつも大勢の貴族たちで賑わっている。 そんな賑やかな中央部から遠く離れた人通りもまばらな宮殿の西端の廊下を、ひとりの男が足早に歩いていた。 無表情ではあるが目鼻立ちの整った端正な顔立ち。服の間から見えるスラリとした白い肌。彼の佇まいからは、紛うことなき上流階級の気品を感じさせた。 この男、名を緋紗(ヒサ)という。 彼はこの宮殿で王に仕える人間のひとりだ。 彼がただの使用人でないことは誰の目にも明らかだった。 派手に着飾った貴族とは違って、黒い衣服を身にまとい、背筋を伸ばして廊下を闊歩する姿は華やかな宮廷内では異質な存在に見える。 緋紗とすれ違う使用人たちは皆、緋紗の姿を見るなり廊下の端に身を寄せ、深々と頭を下げて彼が過ぎ去るのを待つ。緋紗は慣れた様子で、周囲の様子を気を留めることなく、まっすぐに廊下を進んでいた。
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