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高校3年生のとき、初めてユキトと同じクラスになった。
赤根ユキト。
井野上美雪。
五十音順で、席が前と後ろだった。クラス替え当日、ユキトは先に着席していて、俺が席に着いた途端、ぐるりと振り向いてこう言ったのだ。
『みゆきちゃん! 好きです、つきあってください!!』
『……いろいろツッコミどころはあるんだけどまず声がデカい。小声で話せ。つかおまえ誰。みゆきちゃんってなんだ。俺の名前は『よしゆき』だから。『美しい雪』で『よしゆき』だから!』
『そんないっぺんに言われてもわかんないよ~。えっと、おれは赤根ユキト。色の 『赤』 に、木の根っこの 『根』 に、カタカナで 『ユキト』 』
『あ、そ』
『それでね、みゆきちゃん』
『待て。1番肝心な部分が直ってない』
『え?』
『みゆきじゃなくて、よしゆき』
『おれは『みゆき』のほうが可愛いと思うな~』
『おまえの好みは聞いてねーんだよ。名前のせいでよく女と勘違いされたりするけど、これは厳然たる事実』
『げん……? みゆきちゃん、むずかしい言葉しってんね』
『おまえがバカなだけ。つーか何さっきの? まさかおまえも俺のこと女だと思ってるわけじゃねーよな』
『みゆきちゃんはどこからどうみてもカッコイイ男の子だよ?』
『……あ、そ。おまえは男のくせに、……女みたいな顔してんな。まつげ長いし、目ぇでっかいし。色白だし』
『あはは、よく言われる。可愛いでしょ』
『……ヘンな奴』
『でね。おれ、君にひとめ惚れしちゃった。おれは、みゆきちゃんのタイプじゃないかな?』
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