幕間/Criminal Side

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幕間/Criminal Side

 静かな暗闇の中を、あたしはひとりきりで歩いていた。  心音がいつになく早く感じられるのは、緊張しているから。やけに喉が渇くのも、気を抜くと肩のあたりが震えてしまうのも、多分そう。ここまで神経が張り詰めたことは、今まででただの一度だけしかない。  あたしはこれから起きうる出来事について何かしら予感めいたものを持っていた。正直言って引き返したい。帰りたい。全部放り出して、家のベッドで寝ていたい。でも、そんなことはできるわけがなくって。あたしはだから、彼女の部屋へと続く階段に足を掛ける。  RC造のマンションの階段はしかし、あたしが一段上る度に、木でできているかのようにコツコツと乾いた音を発てる。はじめはどうにかして静かに歩こうと努力していたあたしだが、すぐに無理だと悟って、早足で歩くことにした。上からの照明の光が、ひどく眩しかった。  302号室と書かれたドアの前に立つと、あたしはインターフォンのボタンを押した。部屋の主が近所のスーパーから帰ってきたばかりだということはわかっていた。 「どちらさまですか」  インターフォン越しの声はあからさまに不機嫌そうだった。 「あたしよ」 「……入って」     
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