スナーク狩り

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足を踏み鳴らしながら、俺は小さめの自転車が軒先に置かれてある家に目をつけ、そこに向かって歩いて行った。 その家はインターホンがなく、チャイムを押すとぱたぱたとスリッパで廊下を駆けてくる音が聞こえてきた。 「はーい」 エプロンをつけた女性がにっこりとした微笑みを浮かべ、がらがらと音をたてながら引き戸を開けた。 「突然失礼します、私写真家として活動しているものなのですが、現在子どもをテーマとした写真を撮っているんです。もしよろしければ、今後の参考としまして、お子さんが元気よく走っていらっしゃる写真や動画などを見せてはいただけないでしょうか。運動会のビデオテープですとか」 そこまで早口でまくしたてると、女性の顔からさっと血の気が引き、彼女は慌てて戸を閉めようとした。 俺は反射的に戸を押さえ、無理やり横にスライドさせ、ばん、と大きな音を立ててその戸を全開にした。 目を恐怖に見開いた彼女はずるずると後ずさりし、ついには腰が抜けたのか、ぺた、と床に座り込んでしまった。 「どうした? 大きな音を立てて……」 女性に気を取られていると、玄関から数歩歩いたところにある廊下の曲がり角から、男性が訝し気な声を上げながら現れた。 「あなた、あの、須藤さんが言ってた、あの不審者が……!」 彼女はがたがたと声も身体も震わせながら、必死に俺のことを男性に訴えていた。 その言葉に男性も顔色を変え、ぴた、と動きを止めて俺を睨んだ。
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