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「この家から出ていけ! 警察を呼ぶぞ!」
男性は叫ぶように、威嚇するように、俺にその言葉を放った。
しかし、それは逆効果だった。
『警察』という単語を聞いた瞬間、俺の頭の中が真っ赤になった。
『死刑執行後に冤罪発覚』
死んでたまるか。
俺は自分の何かがどす黒いものに染められていくのを感じた。
気づくと、俺は男性に馬乗りになって彼の顔を殴りつけていた。
何度も何度も、彼の顔が血で汚れていっても、俺は殴るのをやめなかった。
男性からの抵抗が全くなくなってからも殴り続け、俺が動きを止めた時には俺の手もところどころ切れていたが、感覚が麻痺していて痛みは感じなかった。
俺は目についた部屋に入り、鞄の中にビデオカメラがないか探したが、入っていなかった。
そのまま部屋の引き出しや棚の中も隈なく探したが、どこにも見当たらない。
隣の部屋の棚も引っかき回して、物を全て床に落としてどこかに紛れ込んでいないか確認したが、やはりここにもなかった。
ふーっ、ふーっ、と自分の荒い息づかいが遠くから聞こえてくる。
どこだ、どこにあるんだ、という声ばかりが頭の中で反響する。
その時、自分が小学生だった頃の記憶が脳裏をよぎった。
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