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「だから、僕はやっていません!」
俺は泣き出しそうに顔を歪めながら、警察官に向かって悲鳴に近い声を上げた。
いらいらしているのか、向かいに座っている警察官がとんとんとアルミの机を人差し指で何度も叩く。
腰かけているスチール製の安く硬い椅子がやけに冷たく感じた。
「そうは言ってもねえ」
彼は睨みつけるような鋭い視線を俺に向け、身体をぐいっと前に突き出してきた。
俺は思わず後ずさり、椅子がガタッという音を立てて少しだけ後ろにずれた。
「現場からあなたが出てきたのを見た人がいるんですよ。ちょうど被害者の死亡推定時刻に現場から逃げるように走り去っていったあなたの姿をね」
「ちょ、ちょっと待ってください! さっきから言ってるじゃないですか、その時間、僕は全然違う場所をぶらぶら散歩してたって。それに、『僕』じゃなくて『僕によく似た人』が出てきたってだけじゃないですか!」
「確かにそうだ」
警察官はどっかりと椅子に座り直し、足と腕を組んでふんぞり返って続けた。
「しかし、目撃者は『くすんだ水色のポロシャツとジーパン、ボロボロのスニーカーを身につけた中肉中背の男性』を見たと言っている。ここまで特徴が一致していて、アリバイのない人間を疑うなという方が無理があると思わないか?」
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