スナーク狩り

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「あーあ……」 俺の口から再び溜め息が出るのは、そう遅くはなかった。 バスを降り、数時間前にも通った道を歩いてはみたものの、監視カメラどころか店一つなく、人通りもまばらだった。 そういう道を選んでいたのだから仕方はないが、ここまで何もないと自分自身が恨めしくなってくる。 散歩コースはもう半分を過ぎてしまった。 もうだいぶ日も傾いている。 希望がどんどんと薄くなっていき、肩を落としながら道を歩いていると、子どもたちが元気に遊ぶ声が俺の耳に入ってきた。 ふと顔を上げると、小学校のグラウンドで子どもたちがはしゃいでいるのが見えた。 夕日をバッグに追いかけっこをしている無邪気な彼らの姿を見た瞬間、俺の頭に稲妻が走った。 そうだ、俺が散歩している最中、この小学校で運動会が開かれていたのだ。 静かな道を選んだつもりが、わいわいと騒がしい小学校の横を通らないと先に進めなくなってしまい、子どもの甲高い騒ぎ声に辟易しながら足を進めたのを覚えている。 その時ちらと小学校の方を見ると、子どもたちが一生懸命に走る様子を、保護者が観覧スペースから応援しながらビデオに収めていたのだ。 俺が歩いていたのは観覧スペースとは正反対の方向。 俺と観覧スペースの間には100メートル走のレーンがあった。 もしかしたら、子どもを撮影したビデオテープの中に俺の姿を捉えたものがあるかもしれない。
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