ストロベリーショートタルト

5/20
前へ
/22ページ
次へ
その日から「この間はどーも」を機に会話が始まり、瀬川さんと話すようになった。 ケーキを用意する時間はとても短いので少しでも長引かせようと、食べたくもない他のケーキを買ってみたり「ドライアイスもつけて、あ、やっぱりいらない」と彼女を困らせてみたり。 特に楽しかったのは、瀬川さんがお店の前で掃除をしている時。 他の店員さんの目は気にしなくていいし、彼女も店の中と違って話し方が軽くなる。 距離が縮まっている感じがして、とても心地いい。 2週間ほど、僅かな時間で彼女と話して分かったのは、 身長は165センチだということ、一人暮らしをしていること、出身は関東ではなく、九州の方。 こっちには住み始めて2年、方言はもう出なくなったらしい。 一番の収穫は彼女の下の名前が(ひかり)だと知れたこと。そしてその名前で呼ぶ許可を得れたこと。 更に、今度プライベートで会える事になり、ずっと楽しみにしていた映画を一緒に見る事に。 「それじゃあ、明日」 「はーい、遅れないでよ? 原川(はらかわ)さん、フフッ、さようなら」 店の前で(ほうき)片手に手を振る彼女。 その笑顔はまるで天使のようで、一日の疲れを綺麗サッパリ吹き飛ばしてくれた。 今夜は眠れるかなぁー? 高揚感に胸を躍らせ、僕はもう一度振り返り、歳も忘れて大きく手を振り返した。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加