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その日から「この間はどーも」を機に会話が始まり、瀬川さんと話すようになった。
ケーキを用意する時間はとても短いので少しでも長引かせようと、食べたくもない他のケーキを買ってみたり「ドライアイスもつけて、あ、やっぱりいらない」と彼女を困らせてみたり。
特に楽しかったのは、瀬川さんがお店の前で掃除をしている時。
他の店員さんの目は気にしなくていいし、彼女も店の中と違って話し方が軽くなる。
距離が縮まっている感じがして、とても心地いい。
2週間ほど、僅かな時間で彼女と話して分かったのは、
身長は165センチだということ、一人暮らしをしていること、出身は関東ではなく、九州の方。
こっちには住み始めて2年、方言はもう出なくなったらしい。
一番の収穫は彼女の下の名前が光だと知れたこと。そしてその名前で呼ぶ許可を得れたこと。
更に、今度プライベートで会える事になり、ずっと楽しみにしていた映画を一緒に見る事に。
「それじゃあ、明日」
「はーい、遅れないでよ? 原川さん、フフッ、さようなら」
店の前で箒片手に手を振る彼女。
その笑顔はまるで天使のようで、一日の疲れを綺麗サッパリ吹き飛ばしてくれた。
今夜は眠れるかなぁー? 高揚感に胸を躍らせ、僕はもう一度振り返り、歳も忘れて大きく手を振り返した。
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