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僕はゲームにログインしてみた。 「ハンドルネームは何にしよう」 「夏目のままでいいか、その方が水無月も見つけやすいだろう」 倫敦か。 1900年ごろの倫敦。 「わたしは猫である。名前はまだない」 また、名無し猫だってよ。 相変わらず強いな。 倫敦で夏目漱石はノイローゼになっていた。 その原因は隣りの住人、名無し猫のせいだった。 「謎は解けたよ、夏目君」 まただ、また勝手に事件に首を突っ込んで、事件を解決してく。 一体、どういうつもりだ。 僕はこんな謎解きに立ち会うためにロンドンに留学したわけじゃないのに。 「僕の事件を書いてみたまえ、君は明日からベストセラー作家だよ」 くだらない、僕はもう十分日本で売れっ子作家なんだよ。 文豪と呼ばれてるんだよ。 それがどうして、こんなミステリー小説を書かなきゃいけないんだ。 ふざけてる。 絶対に書かないぞ。 「大家さん、ハドソン夫人、家賃を少し待ってもらえませんか」 「またですか、夏目さん。あなた日本人でしょ」 「お隣のホームズさんなら、英国紳士ですからツケもうけつけますけどね」 「いつ日本に帰るかもしれないのに、いっぱいツケをためて日本に帰られちゃ、困りますからね」 「どうだい、僕の事件を書いてみたくなっただろう。君のために出版社を見つけてきたよ。ウォード・ロック社で、25ポンドで。 仕方ない。「黄色の研究」と題をつけて、出版した。 「夏目君、事件だよ。暗号だよ。暗号。7つの暗号らしい」 のちに漱石は「七つの暗号」を出版して、家賃を払う。 「こんなことをしてちゃだめだ。文豪なんだ。 後世に名を残すような文学を書かなきゃいけないのだ。 「私は猫である。名前はまだない」 これが名無し猫の決め台詞だ。 こんなことをしてたら、大衆文学しかかけない。 頭に浮かぶのは、猫の話や、おぼっちゃんの話くらいだ。 大体25ポンドってどういうことだ。どうせ、名無し猫のやつがピンハネしてるに違いない。
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