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「赤シャツ参上」
赤シャツ先生。
ゲームの中でも派手派手だな。
いっぱいビキニ女をはべらせてる。
嫌われキャラはゲームでも一緒だな。
「名無し猫君、君を助けに来たよ」
「あんた、誰?」
「誰とは失礼な。真っ赤なシャツでおなじみの赤シャツ先生だ」
「赤ペン先生?」
「そうそう、テストの間違いを赤ペンでチェックする…。それは通信講座だ」
ノリ突込みだ、赤シャツ先生のノリ突込みにロンドン娘がメロメロになっている。
19世紀のロンドンでビキニ姿って、それだけで犯罪だろ。
「ゲームのプログラマー、バグってますよ」
空の探索だ。
ハンドルネーム、名無し猫。
手掛かりはそれだけだ。
とにかく猫を探さないと。
まるでペット探偵だな。
「おーい、猫。名無し猫やあーい」
そうだ、空はゲームジャンキーだ。
水無月空はゲームの世界から抜け出せなくなっている。
空にとってはゲームの世界が現実で、現実は虚構なのだ。
だから授業中、いつも死んだようにボーとしてる。
自分が空だということさえ、忘れている。
この世界から空を救い出さなきゃ。
「ワトソン君、あの女、うざいと思わないかい」
「倫敦に名探偵は一人いれば十分なんだよ」
「ホームズ、何を考えてる」
「切り裂きジャックさんに襲われたよ」
「で、助かったのか」
「もちろんさ」
「危なく殺されるところだったよ」
殺されたら、どうなるんだ。
「それはログアウト」
「ログアウト」
そうか、この世界で猫が殺されたら、ゲームオーバーなのだ。
そうしたら、水無月は現実社会に戻れるんじゃないのか。
「で、ジャックは」
「逃げたよ」
そうか、残念・
「頑張れ、切り裂きジャック」
アパートのドアを叩く音。
開けると、血まみれの空。
いや、この世界じゃ、名無し猫。
アバター、そのまま、空じゃないか。
空そのものだ。
とは言え、僕もそのままだ。
普通にログインすると、アバターは生き写しになるようだ。
「どうしたんだ?」
「どうしたって…、襲われたのよ」
「襲われた?」
「切り裂きジャックよ」
ああ、そう言うことか。
このまま死んだら、空はゲームからログアウトできるのだろう。
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