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「とにかく、ベットに横になって」 「医者を呼んで」空は言う。 「医者?」僕は困惑した。 「医者なんて知らないし」 「医者って言ったら、隣のワトソンでしょ」 「ワトソン?」 医者だったのか。 小説家かと思った。 「ワトソンさんは今ホームズさんと出かけてますよ」 このまま放置すれば空は死ぬ。 ほっておくか? でもゲームとは言え、やっぱりそんなことできない。 「どこにいるか知りませんか?」 「ホームズさんのバイオリンでコンサート中ですよ」 「それはどこ?」 「オペラ座?」 「オペラ座の怪人の…」 「そうそう、シャンデリアが落ちて人が死んだ事件があったばかりの」 オペラ座だ。 僕はオペラ座に向かうため、馬車をよんでもらった。 と、馬車を待つ僕に、 「君はもしかして?」と声をかけてくる男。 「誰?」 「こんなところで日本人にあうなんて」 男は僕をハグした。 「森です。森。森林太郎です」 「誰?」 「軍医の森です。後の鴎外です」 ああ、森鴎外か。 彼はドイツに留学したんじゃ…。 ゲームだからか。 あれ、前にあったような…。 確かもっと高飛車で、こんなに腰が低くなかったような…。 バグか…。 それともプロデューサーが適当なのか…。 脚本家のミスだな。 「夏目さん、今患者さんがいますね」 「どうして?」 「それは今あなたはすごく焦ってる。しかも手に血がついている」 空の血だ。 「あなたはワトソン博士を探してるんですね」 「そう?」 「じゃあ、私が診ましょう。一応軍医ですから」 「じゃあ、よろしく」
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