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その時もいつもと同じ昼休みだった。まどかは仲のいい友達とにぎやかにおしゃべりをしていた。 「ねぇ…みんなは、今、好きな人とか、いる?」 不意にそんなことを言ったのは、まどかの親友である麻子だった。 「あれぇ?そんなこと言うってことは…もしかして、麻子っ、好きな人いるのぉ?」 誰かがそう言った。まどかは理性がはたらく前に浮かんできた小林くんの笑顔に、一人であわてながら顔をあげた。 「ちょっとぉ、ねぇホントにぃ?」 みなのことばにほおを真っ赤に染めながら、麻子はわずかにうなずいた。 「うそぉ。誰っ、だれぇっ!」 わくわくしたようなみなの視線を一身に受けて、さらに赤くなりながらも、麻子ははっきりとした声で言った。 「……こっ小林くん」 その言葉を聞いたとたん、冷たい雷がまどかの頭のてっぺんに落ち、全身を駆け抜けてから足の爪の間を抜けて、床に逃げていった。すぐ目の前で交されているはずの会話が、スクリーンごしの出来事のように遠く感じられた。麻子のことばはまだつづいている。 「それでね、わたし、こっ告白しようと思うの。…お願いっ、みんな、手伝って…」 「もっちろん。いくらでも応援するよっ!ねっ、まどか?」 「とっとっ当然だよっ。あたし、麻子のためならなんでもするよ…」 まどかは反射的にそう答えた。自分と同じ人を好きだという親友を応援することばをひどく簡単に口にしていたのだ。深い考えがあったわけではない。恋か友情か、とか、複雑な判断はどこにもなくて、ただ、なりゆきだった。まどかは自分でも気が付かないうちに、流れにのまれていった。
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