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麻子は、りすのようにクリクリした愛らしい瞳の女の子だった。おもちゃなら着せ替え人形、お菓子ならマシュマロや綿あめ、飲み物ならロイヤルミルクティーみたいな、とにかく可愛い女の子だった。
今日の放課後、麻子はまどか達のアシストを受けて小林くんに告白する。彼はきっとOKするだろう。
一日たってなお、まどかは夢のなかにいるような気分だった。まどかは自分の行動が、すべて他人のものであるかのような不可思議な緊張に支配されていた。それでもまどかは、自分の心を自己分析した結果、小林くんのことなんか本当はたいして好きじゃなかったのだという結論にたっしていた。この胸の痛みは、麻子の恋の行方を心配して、緊張しているのだと自分に言い聞かせていた。
とうとうその時がきた。まどか達は下駄箱のところで小林くんを待っていた。
「小林くんっ!」
「…何?」
「あのね、篠原麻子、わかるよね。…あの子が、小林くんに話があるんだって。これから校舎裏の桜の木のトコ、来てくれない?」
「………いいよ」
小林くんは意外なほどあっさり了承し、まどか達が指定した場所に向かった。まどか達は近くにそっと隠れて、二人の様子をうかがっている。
「篠原、話って何?」
「あ、あのっ、わたし、入学してからずっと、こっ小林くんのこと、みてました。…ずっと…ずっと好きでした。…つっ付き合ってくださいっ!」
麻子は少し言い淀みながらもはっきりと告げた。麻子はとにかくキラキラしていて、誰の目にも可愛らしく映っただろう。しかし、まどかは麻子のことばの一つ一つが自分の心に矢のように突き刺さる気がした。
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