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「ままま、奥さん、公共の場ですから。ここはグッと抑えて」
金髪男が女を静める。トウモロコシが拗ねたようにそっぽを向くと、男は自分を納得させるかのようにふんふんと頷いた。
「大事な娘をキズモノにされたんですから、怒るのも当然だよね…シバタさん?」
睨みを効かせた視線に、気弱男は頭を垂れた。
「じゃあ、ここから本題に入るけど、おたくがこの山田さんの娘、アイリちゃんと懇ろになった件で…50万で示談にしましょうか」
ぷっ…
50万、ときいた私は、そうきたか、口の中の液体を吹き出しそうになった。
大金を要求されたシバタとやらは、言葉を失い、みるみるうちに真っ赤になる。
「50万なんて安いわよね~児童ポルノで逮捕されて~、会社や親兄弟に知られること考えたら~。それにアイリはバージン~なんだからね~そんなウブな子を~傷付けるなんて許せないわあ~」
「…いや!」
トウモロコシのミュージカル攻めに、シバタが真っ赤な顔で反撃に出た。
「お、俺は確かにアイリちゃんにセクシーな写真送ってって、頼みましたけど、実際にはアイリちゃん関係ない芸能人とかの写真ばっか送ってきて…指一本触れてないですよ!」
決死のシバタの弁解はまったくの無駄だった。
「何いってんやがんだよ、子供相手に下心満々だったくせによ」
金髪がニヤニヤする。
「嫌ならお支払いしなくてもいいわ~アイリの~スマホ持って、おたくの会社に伺うっから!」
パアンとシンバルを打ち鳴らすように、シバタを突き放したあと、トウモロコシは銀色のポーチの中から白くて細いタバコを取り出し、紅い唇の間に挟む。
それを見た男がスーツの内ポケットからライターを取り出し、先に火を付けた。
…げ、おいおい、ここは禁煙席だよ?
「あの、申し訳ありません!お客様」
白煙を見つけた男性店員が近付いてくると、注意された女は「灰皿ねーし、もう出るし!」とヒステリックに叫んだ。
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