2人が本棚に入れています
本棚に追加
シバタのテーブルには、あいつらの分のコーヒー代の伝票がしっかり残されていた。
「ねえ」
グラスワインを2杯飲んでいたあたしは少し酔っ払っていて、つい、声を掛けてしまった。
「あんた、タチの悪いのに引っかかったもんだね。まあ、頑張って」
気弱男は一瞬ギクリとした表情でこちらを見たけど、あたしの言葉を完全に黙殺した。ふらふらと立ち上がり、会計に向かう。
その後頭部の薄い貧相な後ろ姿にあたしは毒づいた。
なんとか言えよ、可愛げがない。
そんな頑なだから、女にモテないんだよ。
まだ分かんないの?アイリなんて女、最初からいなかったんだよ、あの馬鹿ップルの自作自演だって気付けって。
ちりりんと鐘の音が鳴り、気弱男が店を出ると、入れ替わりに短躯で小太りの男が入ってきた。
キョロキョロと辺りを見回したあと、あたしの方へ歩いてきた。
園田だ。
「ピンクサファイア…さん?」
あたしの方は、ブログで園田の容姿は知っていたから、はい!と飛び切りの笑顔で頷いた。
市内にある5つの鍼灸院を経営する園田は、鍼灸師と言うよりはちょっとした実業家だ。
【ソノダの孤独のグルメ】
そんな園田のブログを見つけたのは、三ヶ月ほど前のこと。
最初のコメントを投稿しよう!