2人が本棚に入れています
本棚に追加
ブログで見る園田の金満生活。
高級国産車と外車を所有。
友人と共同オーナーしている競走馬が愛しいとか。
美食が生き甲斐で、国内のあちこちで食べ歩いてはそれを自分のブログに載せてる。
猟友会に入っていて、ライフルの手入れが至福の時だそうだ。
何よりもあたしの気を引いたのは
何年か前に妻を亡くし、女に飢えていること。
久々に見つけた上玉だ。
律儀で真面目な園田の性格は、ブログの文章、毎日の更新に現れている。
あたしはハンドルネーム『ピンクサファイア』を名乗って園田のブログの読者になり、コメントをマメに残した。
園田は必ず返信をくれて、やがて親密になった。根気強いやりとりの末、ついに会う約束を取り付けた。
高級ホテルのディナー。
「思っていた通り、宝石のように綺麗な方だな。7時の予約です。さ、行きましょうか」
ニコニコと笑顔を見せる。あたしのことが気に入ったみたいだ。
この店は待ち合わせの場所。
こんな安いファミレスで食事なんかしない。
「あの…」
あたしは眉でハの字を作ってみせた。
「せっかくなんですが…」
「なに?」
ご機嫌だった園田の表情が瞬時に強張る。
あたしは上目遣いでしおらしく言った。
「実は、園田さんに今日お逢い出来るって嬉しくて嬉しくて。昨晩は全然眠れなくて、気付いたらお台所で肉じゃがを作っていたの。
わたしって、お料理得意でしょ?いつのまにか、つい3段重ねのお弁当作ってきちゃったんです。お花見で食べるようなやつです。マンダリンホテルのディナー、楽しみだったんですが、キャンセル出来ませんか?
初対面で厚かましいお願いですが、園田さんのご自宅で一緒に頂けたら、と思うのですが、どうでしょう?」
園田の目に、うっすらと涙が浮かんだ。
「ピンクサファイアさん…君は俺の理想の女だ。亡き妻も君なら許してくれると思う」
あたしの手を両手でぎゅーと握った。
おっさん、拍子抜けするほどチョロいな。
手作りとか嘘。肉じゃがも五目巾着も出汁巻き卵も、みーんなデパ地下のお惣菜。結構な金額だったよ。ま、投資だからね。
それにしても、手のひらが汗でベトベト、気持ちわりぃ…
最初のコメントを投稿しよう!