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学校というのは一種の監獄だと、一体誰が言ったのだろう。確かに意味のわからないしきたりがあったり、守らなければならないルールがあったり。一歩外に出たら無意味になってしまうその行いも、ここにいる間は守らなければならないものだった。
例えばこの長い坂道を登ること一つとってもそうだ。だらだらと続くこの坂道は、学園の名前をとって「カタリナ坂」と呼ばれている。だが、そのあまりの長さと辛さに中には「ゴルゴダ」と呼ぶ生徒もいる。それほどまでにこの坂は急なのだ。
その坂を登る時、一番楽なのは大きなカーブの内側を歩くことだ。そうすれば歩く距離も短くて済む。けれど、私たち一年生は決してそこを歩いてはいけなかった。
学年が若い順に、カーブの大きなところを歩かなければならない。もし万が一にでも内側を歩いているのを見られたら、上級生に睨まれてしまう。もちろん、この学園でいじめなんていう陰湿なものは存在しない。
ただ、静かに見つめられるだけだ。それはいけませんよ、とただ静かに見つめられる。それがどれほど恐ろしいことか。背筋がピシリと凍ってしまうほど、恐ろしい。口うるさく注意をしてくるシスターたちの小言よりも、上級生からの眼差しが一等恐ろしいのだ。
坂の半分ほどまで登って、ふと足を止めた。太陽の日差しはまだ強くなく、汗もかいていない。始業まで一時間以上あるし、寮を出てから十分も経っていないから、長い坂には誰もいなかった。自分一人しかいない坂道は、なんだか天国に繋がっているような気がした。
「海は、見えないな」
そう呟いた自分の声は、泡のように消えていった。
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