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「お前、最近、なんか暗くないか」
三木が放った言葉に、ハッとする。
「別に普通だよ」
口を尖らせて、応えた。
その質問は、もう何度も聞いた。突き放そうと、わざと棘がある言葉で応えたが、逆転した立場を思い返して、少し笑ってしまった。
「普通じゃないだろ。授業中、集中してないし、居眠りしてる時もある。しょっちゅうスマホいじっているし、今までそんなこと無かっただろ。顔色だって悪い、夜何かしてるのか」
図星を付かれて、驚いたと言うか、意外だった。
それは、僕の弱さを、三木が察したからで、つまり僕は、SOSを出していたのだろう。
「…本当に何でも無いんだ、ただ少し不眠症気味でね。心配ないよ」
本当に大丈夫なんだ。
たわいもない事柄だよ。
君が、死んだ時と比べたら。
僕は、探していた。
『黒い日曜日』を。
真壁 鈴を。
ただ、この事は言えないから、黙って微笑んでみせただけ。
毎日、毎日、空いている時間を全て費やし、ネット検索を掛けていたが、めぼしい発見は無かった。
次の日も、その次の日も、どこに行っても、手掛かりすら掴めずに、闇雲に検索を続けた。
真壁 遥を探していた。
『黒い日曜日』の作者だ。
確かに、真壁鈴は言ったのだ。
真壁遥は、母親だと。
だとすると、必ず本人が現実に居るはずなのに、SNSのどこにも該当者は無かった。
三木の利用する、小説投稿サイトにも、真壁遥の事を問い合わせてみたが、返事はまだ無い。
ただ、SNSと一括りにしても、その世界は膨大で、調べきれる物では無いのかも知れないが。
そして、毎晩うたた寝と、検索を繰り返して、朝になる。
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