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◆ ◆ ◆
────命はいつか終わるものだから。
誰かが、そんなことを言った。
いくら知っていようと、未来を大きく変えることは出来なかった。
ひと月後、コンラッドはこの世を去った。
ただ、避けられたことが二つある。
コンラッドの部屋が燃えてしまうことと、コンラッドが部屋で突然倒れてしまうことだ。
大分、心臓は痛んだみたいで途中からコンラッドは病院という所に入ることになった。
フィトは出来るだけ、ずっとコンラッドのそばに居た。
俺も勿論、そのそばに居た。
話を沢山聞いた。
沢山、フィトとコンラッドは話をした。
それを見て、俺は少しだけ心が救われた。
未来のことを話して良かった、と。
「フィト」
降りしきる雨の中、フィトはまたコンラッドの墓標を見つめている。
この雨は俺が降らせたものではない。
雨など必要ない。
雨は悲しみを流してくれないことを俺は知っている。
「フィト、見せたいものがあるんだ」
右手を一振りし、俺は降ってきた雨を一瞬で止めた。
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