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「弁護士さん、信じてください。僕は波子を殺してはいません。やったのは、彼女の姉の彩子なんです。波子は彩子が恐ろしいと言ってました。僕は波子を守るために彩子と戦ったんですよ。そうしたら、彩子が包丁を持って僕に向かって来たんです。刺し殺されそうになった僕をかばって、波子は死にました。殺したのは彩子なんです。信じてください」
「おい、弁護士!なんで黙ってるんだ?!お前も、俺が犯人だと思ってるんだな!あぁ知ってるぞ。この世界の奴らはみんな、俺の敵だってな!波子も敵だった。死んで当然だったのさ。俺が犯人扱いされるなんてありえない。アリみたいな奴のために俺が殺人犯になるなんて可笑しいだろぉがよぉ!!」
「死ね、死ね、シネ、シネ……」
部屋には枕を殴りつけている青年しかいない。彼は一人でやっても無い殺人事件の告白をし、一人で激昂する。枕を何に見立ているかは本人にしか分からない。
「昨夜の申し送りをします。1号室の西湖(にしうみ)さんはいつも通りです。攻撃的な時でなくても必ず二人で対応してください。2号室の~さんは……」
ここはとある病院の精神科病棟。様々な症例の患者がいる。だが、看護学生の自分には淡々と行われる朝のカンファレンスに参加しているスタッフにも普通病棟には無い違和感を感じてしまった。慣れ、なんだろうか?
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