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油断。①
「悪いけど…。誰とも付き合う気はないし。男は生理的に気持ち悪いから無理。……じゃあ俺、忙しいから。今後、二度と話しかけないでね…?」
告白してきた同級生を。
冷めた表情で相手を見下しながら、毎度同じセリフを断る。
そして。
言い放つと同時に。
フッた相手の顔を見ないで颯爽とその場を離れた。
……チッ。
毎日、毎日…。
男から告白されるなんて。
気色悪い…。
呼び出された体育館裏から校舎へとイライラしながら歩いていく。
毎日……体育館裏、屋上、図書館、音楽室、教室に呼び出されては。
好きだの、付き合ってくれ、だの……。
………ホントに。
馬鹿馬鹿しい………。
こんな暇があるなら勉強でもしろッ!!と。
怒鳴ってやりたい。
ドスドスと地団駄を踏みながら。
……人知れず、地面に八つ当たりをする。
将来、人の上に立つ地位に就くために。
これくらいの事は我慢しなければいけない。
……そう思って。
1年と1ヶ月、我慢し続けた。
だが、この時。
俺は我慢の限界がピークに達していて。
ちょっとした【油断】から。
俺の日常が一変していく事を。
この時の俺は……知らずにいた。
────俺、九条雨音は。
学力、運動共に県内トップの学生寮がある男子校に進学して早、一年…。
家柄が代々続く、警察官で…家系的に【文武両道】を掲げている、言わばエリートを目指す古風な家に生まれた次男だ。
もちろん、俺も将来は父のような、人の上に立つ…立派な【大人の男】になりたい。
だけど。
三人兄弟の中でも特に俺は…母親に似たせいか、女顔で体つきは華奢。
そのせいか。
【女の子みたい…】と。
よく周りにからかわれていた。
…そんな自分が嫌で見た目や体つきのハンデがあったとしても兄や弟に【男】として負けたくない気持ちから剣道や弓道をたしなんできた。
もちろん、学力だって。
学年上位をキープしている。
そんな俺は少しの時間も無駄には出来ない。
フーッと深いため息をついて。
キョロキョロと辺りを見回しながら学校でも滅多に人が来ない校舎とは逆の、旧校舎へと校舎へ戻る前に寄り道していく。
でも……そろそろ俺…。
限界だ……。
旧校舎にたどり着いた俺は裏庭に咲く桜の木の下に着くと再度、誰も周りに居ないか用心深く確認して。
そっと。
制服のズボンのポケットに入れていたスマホを取り出して……画面を開いた。
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