第1章 満員電車の中

7/40
前へ
/290ページ
次へ
 ダメだ。俺の理性と手の動きを司る神経の繋がりは、カンダタのつかまった蜘蛛の糸よりもあっけなくプッチンプリン。灼熱だか大叫喚だか地獄の扉がすぐそこに見えても止められないこの手。大義名分なんて連絡網は途絶えて音信不通だ。中央政府の言うことを聞かない辺境の軍隊のように勝手気ままだ。  しかしこの後に及んでも彼女は何の行動もしない。これ以上はないってくらいに顔真っ赤にしてただうつむいている。  それを見たら、ヘタレだって調子に乗る。  まずは円を描くように撫で回してみる。彼女の様子を見る。変わらない。よしよし。  じゃとばかりに、尻たぶをぐっとつかんでみる。彼女の様子を見る。変わらない。よしよし。  くにくにって揉んでみる。彼女の様子を見る。変わらない。よしよし。  それらをいろいろと組み合わせてみる。彼女の様子を見る。変わらない。よしよし。  その間彼女の表情を見ていると、あっとか、いやっとかいう言葉を飲み込むように唇が動いているのがわかる。しかし声は出ていない。  そのいかにも耐えています、という感じの表情がまた大変可愛らしい。不本意ながら萌えてしまった。下半身はもう発車準備OKな大陸弾道ミサイルだ。
/290ページ

最初のコメントを投稿しよう!

211人が本棚に入れています
本棚に追加