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想像以上に甘い香りをさせるシャンプーを終えた僕は、適当に見繕った服に着替えた。少々大きく感じたが、自分の用意の悪さが原因なのであまり気にしないことにする。そのままタオルで頭を拭きながらリビングに向かう。リビングに置かれたテレビからは、ここ最近に起こった高速道路での事故や国会議員の汚職、連続殺人事件について放送していた。今の日本は少しおかしいぞという特集の様だ。そして、それらの事故や事件は瞬く間もなくSNS等で拡散されているらしい。僕ですら知っている訳だからこれらの話題の拡散力というものに凄まじい力を感じる。
そうそう、SNSで思い出したけど僕が恐れているのはもう一つある。それは、人の目だ。SNSが発達した今では、外出中に変な人が居たらネット上に公開されてしまうかも知れない世の中になった。僕は、外でそこまでおかしなことをやってるつもりはないけど、特に最近は外を歩いても家の中にいても、友人の家から出てコンビニに向かう時であっても誰かに監視されている様な錯覚を感じている。自分の一挙一動を値踏みされているかの様な感覚を覚えるのだ。昔から人ごみや、注目を浴びることは得意ではなかったけど、そんなものとは比では無い。気が狂ってしまう様な気持ちになる。今この瞬間でも誰かに見られているかも知れないなんてありえないことを考えてしまう。今この家には僕しかいないはずだから視線を感じる気がするだけのはずだ。
ネガティブな気持ちを振り払おうともう一度テレビを見たが、そもそもやっている特集自体が明るい話ではなかったことを思い出す。テレビを消してやろうと手を伸ばそうとすると、再度連続殺人事件に触れられていた。ふと僕は、この事件の被害者たちも幽霊となっているかもしれないなんてことを思った。殺された人の表情を思い浮かべると、幽霊となって出てきてしまってもおかしくない。彼らは理不尽に殺されなければならなかった運命を憎悪しているだろう。そんな幽霊と会ってしまうかと思うと改めて怖いと感じる。そしてまた、自分も突然誰かに命を狙われてしまうことが起こるのかと思うと寒気を感じ、電源を切った。もっと早く見るのをやめるべきだった。
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