第1章 承認

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ガチャ 返事はないと思いながら、ため息と同時に呟く 「ただいま…」  僕の名前は高山明、仕事は福祉用具の営業マン。誰かの役に立ちたくてこの仕事を選んだ。自分で言うのもなんだが、成績はかなりいい。週の初めから74万も売り上げた。やはり営業には思いやりの精神が必要だ!…しかし、気が重い…  玄関にある電気のスイッチに手を伸ばしながら僕は思う (片付いてますように)  ここ4日間毎日願ってるのに、この祈りは神様に届かない…玄関と廊下の明かりが灯ると深く深呼吸をしてもう一度ため息を付く 「はぁ…やっぱり来てないか…」  廊下の先に見える台所は山積み…何も変わってない。気を引き締めて廊下を進む…が、台所からは直ぐに目を背け廊下を曲がる。右手にある広めのクローゼット…ココも暫く開けてない…それも目を背ける…が、部屋の扉を開けて愕然とする  部屋は脱いだ服で散らかりっぱなし、直ぐにフリーマーケットを開けるほどだ…  テーブルの上は4日分の食事の残骸…昨日残したカップ麺はうどんと見間違うほど伸びきり、飲み指しのペットボトルは3本とも倒れ、中身がこぼれている… 「…ゴミ屋敷」  昔、実家で見たニュース番組を思い出した 帰宅後3度目のため息と同時にベッドの上に座り込み、直ぐに携帯電話を取り出した 「美香?何怒ってんだよ?」  彼女の名前は安藤美香、リンクで鮮やかに踊る彼女とは一文字違い。料理や掃除が大好きという家庭的な人だ。しかも、僕好みのロングヘアが似合うかなりの美人!僕には勿体無い…ここ4日、その思いは強くなっていた 「美香…ここ4日電話には出ないし、LINEの返事もそっけない、それなのにフェイスブックは毎日更新して、昨日なんて さみしい の一言だけのっけて…僕に対するあてつけか?」 不安ばかりがつのり…涙が出そうだ 「もう限界だ、今の気持ちラインで送ろう」    美香本当にごめん!ていうか、どれに怒ってるの かわからないから思いつく限り謝ります いつも片付け任せてごめん 髪切ったのに気付かなくてごめん 作ってくれたカレー不味いって言ってごめん 一緒にいる時スマホばかりイジってごめん ありがとうが少なくてごめん 別れるのだけは本当にいやです。ごめんなさい。 「よし、送信!後は返事を待とう」 そう言いながら僕は疲れて眠ってしまった
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