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ネット上に柊家の住所がアップされるまで一週間とかからず、嫌がらせも始まった。
何人前もの出前が届くといった古典的なものから、ポストに中傷のビラが何枚もつっこまれる・塀への落書き、車や自転車へのいたずら。
「それから、実家や家族を盗撮した写真もアップされました。学校への苦情の電話も来たようです。殺してやるという物騒な書き込みは、百件以上ありましたね」
柊は一か月もたたずに学校に来なくなり、家は昼でも雨戸を締め切るようになった。
田中さんはもう関わり合いになりたくなかったのだが、クラスの担任に頼まれて、一度だけ様子を見に行ったという。
家の塀にはかつて柊がサイトに書き込んだ内容を印刷された紙が何枚もべったりと貼られていて、雨戸には真っ赤なペンキがぶちまけられていた。カーポートには、割れたワイン瓶の破片がびっしりと散らばっていたという。
「親父もおふくろも逃げやがった、俺だけ置き去りにしやがって」
まともに食事を取っていないのか、柊の頬はげっそりとこけ、目は血走っていた。
「卑怯な奴らめ、匿名で俺を攻撃しやがって、卑怯な奴らめ」
ぶつぶつとつぶやきながら、彼は田中さんがいるのにも関わらず、パソコンの画面を見続けていた。
『こんなことして何が面白いんだ』
『名誉棄損で訴えるぞ』
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