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物心ついてからずっとゲームは行われてきたので、麻里はそれが当たり前のことだと思っていたし、家の外では父も母もニコニコして「うちはとても仲のいい家族」というので、兄も弟も楽しんでゲームをしていると思っていた。
「姉ちゃん、うち、変だよね」
弟がぼそりと言ったのは、麻里が中学に入ってしばらくした頃で、その頃家では兄と母の順番が時々入れ替わるようになっていた。
「変、どこが?」
「だって、友達の家はどこもゲームなんかしていないっていうし、毎日黙っててもご飯が出てくるって」
「よそはよそ、うちはうちじゃん」
麻里が学校からかえって遊びに行きたがる度、母はそう言って洗濯や掃除を麻里に行わせた。
「姉ちゃん、本当にそう思ってるの?」
麻里はうなずく。父が仲が良い家族というのならその通りだろうし、よその家がどのようなものか興味もわかなかった。
「逃げよっか」
麻里が中学を卒業するころ、殴られ過ぎて前歯が無くなってしまった母がポツリと言って、麻里の手だけを掴んで真夜中に家を出た。
それから色々なところを転々として、小さなアパートに落ち着いたころ、麻里は十八歳になっていた。
「姉ちゃん、おれやっと一番になったよ」
髪の毛がほとんどなくなった父と痩せこけた兄を正座させた前で、ピースサインをする弟の写真が送られてきて、麻里はクスリと笑う。
「おめでとう。次のゲームも頑張ってね」
と返信し、麻里は母親に写真を見せる。
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