届け物

2/5
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 テーブルに新聞を敷き、その上に滑らないようにタオルを乗せる。しまってあった出刃包丁をテーブルに出し、そうしてから、食材を取り出し、タオルの上に置いた。内蔵を抜かれ、頭を落とされた身体は、まだ生きている時と姿があまり変わらないため、罪悪感が芽生える。 「でも、旨いんだよなぁ」  生きていた命を美味しく頂く。そうして感謝をする。元の姿に近い肉塊をみると、そういった気持ちが自然に芽生える。  今日、スーパーなどで売られているものは、魚も含め、元の姿をすぐには想像できない程に加工されている。平気で食べ物を残す輩には、野菜を収穫することや、と畜の現場を見てもらうのはどうだろうか。などと偉そうな事を思いながらも、自分は平気で物を残したりするんだよな。  こんな事を考えながら、私はタオルの上の肉塊を撫でた。ひんやりとし、しっとりとした感触。まだ小さいために、肉質は軟らかそうだ。重さとしては2キロくらいだろうか。 「まずは枝肉にしていかないとな」  包丁を掴み、まずは大きな部位、大腿の関節を切り離す。内腿の付け根に歯を入れ、外腿の方へと滑らす。白い骨が見えるようになったら、骨の間に歯を挿し込み、足を揺すってみる。一度包丁を脇に置くと、乱暴ではあるが、胴体を押さえ、足をねじ切るようにすると足が外れた。反対側も同様にして外す。  今度は腕肉だ。脇から腿と同じようにして外していく。こちらは小振りなので、すぐに外せた。     
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!