友人の話

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「それで、お前がオレを殺そうとしている理由は何だ?」  友人は体中縄で縛られた状態で俺の部屋で寝転がっていた。そして俺は包丁を片手に今のやり取りをずっと友人としていた。 「で、いいのか?俺はお前を今から殺そうとしているわけだが、嫌なら嫌だと言ってくれればいい」 「そう言うと、お前はオレを殺そうとすることをやめてくれるのか?」 「今は我慢する。でも、その代わりまた時間を置けば同じようなことになるかもしれないな」  俺は手にした包丁を見ながら言った。 「お前がオレを殺すことで幸せになれるのなら、止めはしないさ。幸い、オレには守らないといけない家族とか、そういったものはないからな。それで、なんでオレを殺そうとしているのか、教えてくれるか?」 「言って、理解できるのか?俺と同じ人生を歩んでいないのに、どうして理解できるんだ?」 「言ってくれれば、わかるかもしれないだろ」  こんな状況でありながら、友人は冷静に言う。 「なら、言うぞ。理由は簡単だ。お前が俺をずっと殴り続けてきた大嫌いな死んだ親父と顔が良く似ているからだ」 「そうか、なら、仕方ないな」 「仕方がない、だと?どうしてお前はそう言うんだ?」 「どうしてかって?大切な友人であるお前を、助けたいからだ」  そして俺は包丁を振り下ろした。
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