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一年後、俺は友人と再会した。
あの日、俺は友人の縄を切ると、財布だけを持って当てもなく全国を旅していた。そして一年後、再び自分の部屋に戻って来たとき、そこには友人が待っていた。
「ずっとここにいたのか?」
「いいだろ。ちょうど前に住んでいたアパート改築工事をするから部屋を出て行かないといけなくなっていて困っていたんだ。オレが生活していたから部屋は綺麗だろ。むしろありがたく思え」
俺は気まずそうに眼をそらした。
「なあ、なんであの時殺さなかったんだ」
友人は澄んだ目で訊いてきた。
「別に、理由なんてない」
俺は適当に言った。
「一年間、誰も殺してないだろうな」
友人は冗談っぽく訊いた。
「俺には俺のルールがある。そのルールに則っていない限り、そんなことはしない」
友人は嬉しそうに笑った。
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