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校内の時計は夜の8時30分を指していた。
ミツオは、校門に立てかけてある、「第35回宿木高校文化祭」のアーチを、
用心深く通過する。
ミツオが、こうまでしてハイリスクなミッションを遂行するのには、
理由があった。
ミツオは、まったく足音をたてずに歩く自身はあったが、
どうにも腹の音が鳴って仕様がなかったのである。
潜入のプロも、腹ペコはたえられないものだ。
そこにもう一つの違和感、夜の高校からおいしそうなニオイがしたからだ。
ミツオにとって、背に腹はかえられない状況であったのだ。
「最低でも、つまみ食いぐらいは、したいものだな」
ミツオは、心から、そう願った。
「だが、【奴】に・・【奴】にだけは、会わないようにしなければ・・・」
ミツオにとって、最大の障害、【奴】がいる可能性が高いことが、
このミッションのハイリスクたる所以だった。
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