リアルの自分

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五月。GWが過ぎ去り、新入生たちの「大学デビュー」の成否がはっきりとし始める季節。キャンパスでは、いわゆる「陽キャ」グループの楽しげな談笑と、五月病患者たちの沈んだ表情がまだら模様を描き、講義に姿を見せなくなった知人のことが話題に上り始める。 僕は……大学には来ているけど、残念ながらあちこちで花を咲かせている明るい会話の輪には加わっていない。ツイッターをしながら、一限の授業へと向かう。   れーくん(@罰罰罰)《1限から語学とかほんと頭おかしい。落とす以外の未来が見えない》 つぶやいて一分とたたないうちに、リプライが飛んできた。二年前からのフォロワーだった。   マキナ(@見見見)《@罰罰罰 ツイートがだいぶ大学生らしくなってきましたね。そのまま堕ちてきちゃってもいいんですよ??》 マキナのリプライに、僕は思わずクスッとしてしまった。あ、いま完全気持ち悪い感じの人になっちゃったな、と思いつつ周りを見渡すも、誰も自分のことなど気に留めていない。改めて画面に視線を落とし、授業前最後の返信を送っておくことにする。   れーくん(@以下略)《@見見見 え、ちょっと待ってください……そっちの「堕ちる」はほんとにやばいんでダメですww てかマキナさんはすでに落ちてる側の人なんですね……》 僕は、こうしてツイッターで本名も顔も知らない人たちとつながっている時間を、いちばん楽しく感じる。でもそれでも、それでも悪くはないんじゃないか? そう自分に言い聞かせながら、教室へ向かった。
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