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その写真は、明らかに自分の視点から撮られたものだった。卓の上に散らばっている牌の具合まで、そのままそっくり再現されている。もはや、偶然の一致や他人のいたずらで済ませられるレベルではなかった。その場こそ、笑いながら「黙って撮って悪かったよ」と言ってごまかしたものの、内心では言葉にしようもない恐怖を感じていた。後でカメラロールを見返してみても、そんな写真は残っていなかった。
その後も、あまりにリアルに忠実な僕のアカウントは投稿を続けていった。このアカウントのツイートには、ある傾向が見てとれた。それは、決して「炎上」につながるようなネタはつぶやかないということだ。すべてのツイートは当たり障りのない日常を綴ったものばかりで、そこには少なくとも違法性という点で叩けるような要素はなかった。
僕とて浮かれた凡庸な大学生だから、未成年にも関わらず調子に乗ってお酒を飲んだりすることはままあるのだが、そういったことは絶対にツイートされなかった。
まるで寄生虫のようだ。宿主と運命共同体の関係にある寄生虫。だから、決して宿主を殺してしまわない範囲で自分の利益を得ようとする、そんな寄生虫。
そういう意味では、この「リア垢」は、放っておいたところでひどく害をなすというものでもなかった。でも、私生活を自分の意思に関係なくばらまかれるのは、実害がないにしても嫌なものだし、何よりこのアカウントの存在自体が不気味だった。できればこんなもの、なくなって欲しいと、そう願っていた。
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