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ふと思いついた。もし僕自身がリア垢を作って、そこに日常のちょっとした出来事を、あのアカウントがつぶやきそうなネタをツイートしていったら、先手を打っていってみたらどうなるのだろう? もうどうせ、僕はあの「リア垢」によって生活を晒されてしまっているのだ。今さら自分の日常を切り売りすることに臆する必要もない。むしろそれで、今ツイッターで僕の「リア垢」として活動しているよくわからない存在の目論見が打ち砕かれるなら、むしろ喜ばしいことだ。善は急げで、さっそく、本当のリア垢を開設した。
玄野玲(@私私私)《諸事情あってアカウント作り直しました!前の垢のフォロワーさん、フォロバよろしくお願いします!》
そして今や偽物となった「リア垢」のアカウントのフォロワーをフォローしていく。フォローバックは順調に返ってきた。さて、あとは相手がどう動くかだ。僕のアカウントが偽物だと言いがかりをつけてくるだろうか。こちらとしては、戦争に応じる準備は出来ている。いくら向こうが僕の私生活を正確にツイートしようが、奴は僕ではない。僕が僕であることは、他の誰より僕のほうができるはずなのだ。
と、身構えてみてはいたものの、二日たっても偽の「リア垢」は動きを見せない。仕掛けて来ないだけではない。ぱたりと、ツイート自体をやめてしまった。本物が現れたことに萎縮してしまったのだろうか。だとすれば都合がよい。一応知り合いにフォローし直してもらってはいるし、少しばかり日常のことをツイートして、適当なタイミングで放置しておくことにしよう。
そうして僕は、あまり気は進まなかったが、ちょっとした、当たり障りのないことをツイートするようにした。そうしてつぶやいた文面は、例の「リア垢」のものにそっくりだった。この三か月弱、本当に自分があのアカウントを運営していたかのように、自然と指が動いて文字を選び、あの「リア垢」そっくりのツイートを生み出してしまっていた。
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