第1章 若葉ノ囁キ

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緑が生い茂る森の中、道なき道を歩き続ける少女がそこにいた。 その少女は膨よかで、ハイキングには似つかない服装ーセーラー服ーで、滝のような汗を流しながら草木をかき分けて歩行する。 チリン、チリン、と歩みを進める度に髪飾りの大きな鈴が揺れて音色を奏でる。 「……ハア、ハア、ハア……いないなあ……」 ふー、と一息つく彼女。どうやら探し物をしている様子。 そっと近くの岩に腰掛けると、背中に抱えているリュックサックから水筒を取り出し、水分補給をする。 ぷはー……と口内を潤し、少し体温が下がるのを感じる。 視界を宙に向けて、空を見上げた。 木々の間から覗く青空は真っ青に透き通っている。 ぼんやり空を見上げていると、ブワッと急に風が起こり、後ろから桜の花びらが散る。 「……春、かあ……」 山桜の花びらを浴びて、今の季節を身にしみて感じ取る。
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