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ユウちゃん、と呼ばれた少年はぶっきらぼうにぼそぼそと呟く。
「そうだね。折角の晴れ舞台があと一ヶ月と迫ってるのにこんなずんぐりむっくりじゃだめだもんね!」
よしっ!と気合いを入れると、
「じゃあダイエットがてら山登りを再開しまー……」
サヤは忍び足でその場を後にしようとした、が。
「って行かせるかっつーの」
「ぐへえっ!」
彼女の後襟を掴み、足を強制的に止める少年。
「あのなあ……さっきまで無駄話しちまった俺も悪いけども、お前、ここがどこなのか分かって山登りだのほざいてんのか?」
呆れた顔で彼女を上から見る。少し怒りの情もあるようでセーラー服の後ろ襟を掴む手に力が入っている。
「……………」
彼女の口はへの字に結んだまま開こうとしない。
「ここはかつて太古から神々が住んでいたとされる森だ。だが人が新たな文化を創る度にその進化の被害に日本列島各地にいた神はその場から追い出され、ここ、守ノ釜島に住みついてる。その神達が人に恨みを持ち人を襲うようになる。それを恐れた村長は、神を鎮める力を持つ陰陽師の碓氷(うすい)家に依頼し神の暴走を止めた。その血を引き継いでいるのが、俺達だ」
「だが最近になって再び神の暴走が始まろうとしている。そこで碓氷家の頭であり、父方に当たる「碓氷 竹雄」さんがこの森を封印し立ち入ることを禁じた。もちろん、ちいせえ頃に直接見たお前なら覚えているな?」
「…………」
未だに口を開かないサヤ。
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