第1章 若葉ノ囁キ

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サヤはすぐに仰向けになっている疫病神の傍に寄る。 「……サヤ。気をつけろ。下手こくとあいつのように呪いを授かるぞ」 険しい顔つきで疫病神を見つめる彼。そう、あの湖から出てきた青少年だった。 全裸だった彼は今は黒い服、しかも上着を腰に巻き付けて下半身を隠していた。 そしてサヤは上半身肌着姿だった。 つまり彼は彼女のセーラー服を腰に撒いているのだ。 「大丈夫。任せて」 彼女はそう言うと、疫病神の頭上に来るよう回り込むと両手を組んで胸の中心部にぐっと付け、両足を揃えて深々と一礼し、背筋を伸ばしたままその場にしゃがみ込み、再び深々と一礼しそのまま再び唱え始める。 「呪いを撒く神よ。この地に住む人と獣の平穏を保つべく再び安らかに眠りにつきたまえ」 彼女が唱え終えると疫病神は動きを止め、足先から黒い靄となり、虚空の彼方へと消えていったのだった。 「……早く祀らないと再び蘇ってしまう。神木の新芽でいいんだけど…」 と、辺りを見渡し榊を探し始めるサヤ。 いつの間にか隣に居た青少年がスッと木の枝を差し出す。 「……あ、ありがとう」 彼の手から神木の枝を受け取ると、疫病神の跡地へ踏み入り、その中心部に枝を刺す。 そして再び両手を組んで一礼する。 「仮止めだけど、無いよりはマシだよね」 呟くように言うと、急いで彼、ユウの元へと駆けつけた。 ~*~ 「だからあれほど森に入るなと言ったであろう!!」 ベチン!! 彼の治療し包帯まみれになった背中を強く叩く中年男。 「いっってええええ!!!なにすんだこの馬鹿親父!!!!」 「馬鹿はお前だこの馬鹿野郎!!学校サボってまで森に入り浸るなんて……。おまえもう高校生なんだぞ!!少しは自重しろ!!」 ユウに叱りつけるこの男性は、先程ユウが言っていた碓氷竹雄。サヤのお父さんに当たる人。 だがユウも彼女の家に住んでいるらしく、彼は碓氷を親父と呼んでいる。 「父さん、ユウは悪くないの。悪いのはーー」 「もちろん、お前だ。サヤ」 ビクッと肩を震わせ、恐る恐る彼を見つめるサヤ。 「そもそもお前が森に入らなければユウもこんな馬鹿げたことをせずに済んだんだ」 「…………」 彼女は深く反省しているのか、俯いて彼の説教を聞いている。
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