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「わーい!久々のごちそうだー!!」
「はらへったー!」
「ねー!もう食べてもいいでしょ?」
「だめ!まだ父様がきてらっしゃらないじゃないか」
二十畳ほどある広い和室に長机を置き、そこに天ぷらやおひたし、鍋にサラダ等たくさんの料理が並んでいる。 その料理によだれが落ちそうな顔で見つめるのはカミツカイの子ども達。 全体から見て十歳から二十歳近くぐらいだろうか。 幼き子供達がてんやわんや騒いでおり、年上の子達があやしたりしてとても賑やかな場だ。 この中にはユウとサヤも二人で何か楽しそうに話をしていた。
襖が開けられ、その向こうにいる人物が映ると子供達は騒ぐのを止め、正座で元の位置に待機する。
「…皆、夜遅くにわざわざ来てもらってすまなかったな」
彼、碓氷はアサギを連れて部屋に入っていく。 空いている席に着くとあぐらをかいて座り込む。 彼も続いて同じようにして腰を下ろす。
「では、今回集まってくれたのは他でもない、新たな仲間がカミツカイとして来てくれたことを報告するためのものだ。では、軽く自己紹介を」 と、横に居る新人を見て、何か話すよう促す。
スッと彼は立ち上がり、辺りを望む。子供達は興味津々で自分に対しキラキラと純粋な瞳で見つめ、女性達は彼の美貌にうっとりして頬を赤く染めている。
は、と彼は顔の動きを止め、一点に絞り、そのまま見つめる。
彼女、サヤだ。
ユウと一緒に隣に並んでこちらを見ている。 その視線はどこか不安そうだ。
一方、ユウは面白くなさそうに机に肘をかけてかったるそうに彼を見ている。 二人を視界に入れた後、今度は辺りを見渡しながら口を開く。
「…初めまして。アサギと申します。よろしくお願いします」
淡々とした自己紹介を終え、一礼するとパチパチと歓迎の拍手を送ってくれた。
「…けっ、見た目の割にしょっぺえ挨拶しか出来ねえのな」
「こら、ユウちゃん」
つんけんな態度で見るユウに注意し小声で叱りつける彼女、サヤ。
「……私は、とある娘を捜しにこの地へ下りてきた。……サヤ」
急に名前を呼ばれたものでびっくりして目を丸くして彼を咄嗟に見る彼女。
「お前に再び会えたことが何より嬉しい。これからよろしく頼む」
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