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フッと優しくサヤに笑いかけるアサギ。その笑顔にやられたのか、女性の黄色い声が湧き始めた。 当の本人も顔を赤く染め俯いて照れているのを隠している。
「……なーに照れてんだこの豚」
「ぶ、豚じゃないもん」
満足げに座るアサギを横目に、碓氷は反動したかのようにすくっと立ち上がった。
「さて、自己紹介も終えたことだし、まずは頂くとしよう。新たな仲間に、乾杯!」
「「乾杯!」」
碓氷の言葉とともにそれぞれ注がれたグラスを手に一斉に突き上げた。
「さあアサギくんも遠慮しないでドンドン食べてくれ!」
そう言われたアサギは机上にまんべんなく置かれた御馳走に目を移す。
鯛の姿造りに小鉢ものにサバの煮物にお吸い物…、今すぐ箸をつつきたくなるような美味しそうな料理が並んでいる。
彼は鯛の姿造りに盛られた刺身に箸を伸ばし、口に放り込む。 彼は少し考え込んだ様子で味わっていたが、自然と感想を口にしていた。
「……おいしい」
「そうだろう。でもよかった。口に合わないかと少しひやひやしていた所だ。まあ私が作ったわけじゃないんだがな。お前の…いや、カミツカイの巫女が作ったものだ」
「サヤが!?」
グワッと彼に寄りかからん勢いで身を乗り出し、心底驚いた表情で碓氷を見る。
「……ま、まあ全部が彼女が手がけたものではないが、大体は、そうだな」
「……うれしい。あの子に逢えただけでなく、あの子の手料理まで口に出来るとは!」
これも、これもそうか!?といろんな料理に箸をつつく姿はまるで幼き子供のよう。
「……あの子に惚れたか」
「………」
彼は碓氷の問いに答えること無く、料理を食すことに集中していた。
宴も終わり、子ども達は部屋からぞろぞろと出て行く。 料理も使い達が片付け、机上には何も無い状態になった。 残った子ども達、高校生ぐらいだろうか、彼らは机を端に置き、碓氷とアサギを前に横にいくつか座布団を敷く。
「すまないな、アサギ君。もう少し付き合ってくれ」
彼は少し申し訳なさそうにアサギの方を見て、アサギは首を横に振りおき使い無く、と合図する。
「小さな子達にはこの時間まで起こすのは体に障るだろうから早々引き上げてもらったのだ。…まあ私から見たらこの子達もまだまだ幼き子達だが」
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