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「お、お味噌汁を作っています…」
ザクッザクッ。
ほうれん草をざっくりと切る音がリズミカルに続き、大きな鍋に沸騰させておいたお湯の中に入れこむ。 他にも人参やタマネギなどを加え、調味料を少しずつ加えて味を整え煮込むと、次の作業に移る。 大きめの銀色の冷蔵庫から魚の切り身をいくつか取り出し、塩をふりかけ漬け置きし、再び冷蔵庫から野菜をいくつか取り出し大根おろしときゅうりを輪切りにしていく。 漬け置いた切り身を熱していたフライパンに入れて焼いていく。 その間にもずくを出して酢の物を作っていく。
体に似合わずテキパキと動く彼女の動きについていけず、唖然と立ち尽くしていた。 ピピー!ピピー! 突然の電子音に驚くアサギ。 音を出していたのは丸い白い物体で、穴から煙を吹き出している。
「何だこれは……」 とその煙に手を伸ばした。
「あっ!! ダメ!!」
即座に気付いたサヤは慌てて彼の動きを止めんがごとく、腰に抱きついた。
「…………サヤ……?」
急に抱きつかれアサギは少し顔を赤くして彼女を見下ろす。
「これ炊飯器って言ってお米を炊くヤツなの!その煙は蒸気だから火傷するよ!!」
もう!危なっかしいんだから!と頬を膨らましてつり目になって怒りを露にしている彼女だったが、すぐに彼から離れて、ご飯の支度の続きを行う。 彼は彼女に抱きつこうとしたのか、行方を失った両腕が悲しく物語っている。
「サヤー!弁当できたぜー!」
のれんからにっこりと元気な笑顔の少女が顔を出してきた。
「かなちゃんありがとう!」
「あ!なんか野郎がいるかと思いきや!お前昨日の新入りじゃん!」
アサギの姿に気付いたのか、指差して目をまん丸くさせる。
「なになにー?朝から熱いこって!」
「そうゆうのじゃないから……」
ははは、と乾いた笑いを浮かべてそう返すサヤに、つまんねーの!とふて腐れる彼女、カナデ。
「まあサヤは魅力があるからほの字になっても仕方が無いけど、こいつ人妻だからな!そこ踏まえておけよー!」
ゲラゲラ笑いながらのれんを降ろして奥の方へかえっていく。
「かなちゃんったら……相変わらずなんだから……」
はー、とため息を付きながらも着々と盛りつけ作業に取りかかっていく。
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