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せっかくの楽しみに邪魔が入ってしまった、と心の中でぼやきながらサヤの方を向く。 サヤ……と彼女の名前を呼んだ次の瞬間、
「もう!!せっかくのご飯に埃が付いちゃうでしょ!!争うなら他でやってよ!!早く出て行って!!」
彼女もユウ同様、それどころか彼以上に立腹しており、般若のような顔で彼ら三人を叱りつけ、強引に背を押して台所から退場させたのだった。
「サヤ………」
「なんで俺まで怒られる羽目に……」
納得いかねえ……とブツブツ文句をいいながら自分の部屋に向かったユウ。
一方、アサギは初めて彼女に怒られて少し喜びを感じていた。 いつもと変わらない彼女に。
仕度を整え、学ランを着たアサギは食卓に向かっていた。 食卓、昨日の宴を行った場所だが既にアサギ意外の人達は着いていたらしく、昨日同様長机に料理が並べられている。
「おお、アサギ君。似合っているよ」
「……ありがとうございます」
ゆっくりと座布団に腰を下ろす。
「では、皆揃ったところで、朝ごはんを食そうとしよう。天の恵みに感謝を、いただきます」
「「「いただきます」」」
両手を合わせて軽く一礼してから食べる。 ごく普通の食事前の規則だが、アサギは戸惑いながらも見よう見まねに合わせる。 机上に並べてあるのは、ご飯にみそ汁、大根おろしが添えられた鮭の塩焼きに小鉢に入った酢の物。 健康的な朝ご飯だ。 どれも濃すぎず、彼女らしい優しい味がする。
「……食事を楽しんでいるところに水を差すようで悪いが、」
彼の食事を遮るように声をかける碓氷。
「学校について少し説明をしておこうと思う」
「学校はここから山を下りて島の民達が住まう村、富鬼村(とみきむら)の近くにある。廃校になった校舎を再利用させてるものだ。そこでは神納する技術を身につけるべく特訓を行っている。もちろん国語や算数等の学科も学ばせているが」
彼の話に耳を傾けながらも、箸を止めること無く食べ進める。
「昨日言った通り、学校まではサヤとユウと同行してもらおうと思う」
「サヤとか!」
彼女と登校できることが嬉しいのか、口元に米粒が付いた状態のまま目を見開いて彼の方を向く。
「ははは!そんなに喜ばしいことか!」
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