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時は1880年。明治政府による陰陽寮廃止という陰陽道禁止令が出て間もない頃。
彼は陰陽道が禁止される法令が出ているにも関わらず、この島で密かに陰陽師として島人を助けるがため働いていたのだった。
そして今宵、この湖に住む神を倒す時が来た。
元は湖の守り神を祀る場として建てられたのがこの神社であったが、まさかその祀る対象の神を倒すという莫迦なことをしようと誰が思うだろうか。
タブーで異常過ぎる彼の思考はどうなっているのだろうか。
悪怯れもなく、青年は座っている奏者達に演奏するよう手を挙げて合図する。
すると、奏者達は息を合わせて合奏を始め、女は歌い始めた。
まるで今から神楽を始めるかのような光景であるが、実際は真逆である。
音楽が盛り上がった頃に、奥手から白い着物姿の痩せ細った長い黒髪の少女が出てきた。
彼女の目はうつろで、まるで視界がよく見えてないように見える。
ふらふらと歩く少女の跡を付けるかのように赤い小さな水たまりが連なるように続いていた。
少女は流血しているのである。
どこからか。
胸にキラリと外の月の光りに反射して、己の存在を強調するのは黄金の小刀。
少女は負傷していたのだった。
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