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だが少女は痛々しく、深々と胸に刺さっている刃を気にすること無く、無表情で歩みを続けていく。
神社と湖を繋ぐ橋を渡ると湖の中に続く階段をゆっくり、ゆっくり下りていく。
そのまま湖の中に入るかと思いきや、少女の足は湖の中に浸かること無く、水面上を歩み始める。
「魂消た(たまげた)……!人が水面を歩いてやがる……!」
「ありゃあ人間じゃねえ!化けもんだ!」
「ああ……神様仏様……どうかおいらを祟らねえでくだせえ……」
「バカか。今からその神様を殺ろうって時に」
神社の後ろにライフル銃や鎌、小刀等を構えている男達はヒソヒソと目の前の驚異的現象に驚きを隠せずにいた。
「やはり神の認めし巫女の血を引き継ぐ者…。碓氷様の眼に狂いはありませんでしたね」
彼の側近だろうか。青年、碓氷(うすい)の近くに駆け寄り耳打ちする、彼と似たような格好をしている青年。
「彼女がいなければ私はあやつに手を打とうと思えなかった。……彼女のためにも、私たちがあやつを仕留めなければならない」
彼女、と碓氷の口からその言葉が出てきたと同時に、いつの間にか宙に浮いている白衣の娘を見やる。
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