第0章 禁断ノ調ベ

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 少女は空中に透明の階段があるかのように、一段一段昇っていく。  止めどなく流れる血は宙に留まることなく湖の中に落ちて赤い波紋を作る。 「……これが、巫女の力……」 「巫女の力は偉大だ。だからこそ彼女の力を借りねばならん。この後、彼女を分散させて神木に宿らせて神の力を弱らせ封印させるのだが、実は一時的な効果でしかなく、後に封印が解けてしまう」 「だがその時に彼女も転生し再びこの地に落ちて巫女としての力が目覚めたとき、再び封印を施す。彼女には悪いが、我々にはもうそれしか方法が無い」  碓氷の側近は力強く頷いた。  今から神との戦いが始まるのだ。    前例のない戦に緊張のあまり冷や汗が止まらないが、それでも彼は島人のため、この身を投じる覚悟は出来ていた。 「碓氷様」  碓氷の元に別の側近が駆けつけてきた。 「山手より”やつ”の目撃情報が。仕留めますか」  男は狩人の服装でライフル銃を構えてカチャ、と音を立てて今にも駆逐しようとする意気込みが感じ取れる。 「…………いや、まだ良い。」 「だが、油断はするな。相手は神だ。用心せよ」 「はっ」  深々と頭を下げると、無駄の無い素早い動きで持ち場へと戻っていった。
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