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一方、場は変わって森の中。
監視兵達がライフル銃や刀を持って何かに警戒し辺りを見渡している。
”何か”がそこにいるようだが、姿を確認することが出来ない。
だが気配を隠していた”何か”に気付くこと無く、”何か”は両手に持つ刀を兵士に振り下ろす。
「ぐはっ!!!」
彼は上半身と下半身と切り離され、半身無くした足はそのまま後ろに倒れ込む。
その襲撃に気付いた兵士達は一斉に叫びだす。
「出たぞオオオオオオ!!!龍神だアアアアアア!!!」
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
近くに隠れていた兵士達が一斉にして人間の姿をした”何か”、ーー龍神(りゅうじん)に斬り掛かる。
彼は奇妙な仮面をつけており、貧相なぼろぼろの着物を身に着けていたが身のこなしはとても軽やかで、一つに結った長い銀髪が川のごとくキラキラ輝いてそれは周りに湧き出る血しぶきによって赤く染まる。
首が飛ぶ者、胸を貫かれたもの、無惨な姿になった兵士達が彼の足元に横たわる。
ポタポタとかかった血液が地面に交わること無く溜まりを作る。
自身の状況を気にすること無く、瞬時に森を駆け抜けていく。
彼は内心焦っていた。
ーー間に合わないかもしれない。
ーー彼女の救出に。
「ーー……カヤ……!!」
森林の木々の隙間から月とその中心部に浮かぶ少女を見つけて、ハッと足を止めること無く彼女の名を叫ぶ。
「カヤーーーーーーッ!!!」
森林内に叫んだ彼の声は、やまびこのごとく何度も響き渡る。
しかし彼女はそれに気付くことも無く、こちらを向こうとしない。
「……愚かな人間どもめ……!!」
龍神、と呼ばれた彼は森からようやく出て湖に入った瞬間、少女の指先から帯状のものが出てきた。
その帯は”彼女自身”で、碓氷の待つ巫女の儀式が始まろうとしていた。
「……!!! ダメだカヤ!!!自我を失うな!!!人間どものまじないに操られてはいけない!!!」
仮面で顔が見えずとも、声が僅かに震えており、焦りが見えていた。
森の茂みに隠れている兵士達に気付くこと無く、彼は彼女同様水面に立ち、懸命に彼女の元へ駆け出そうとする。
ダン!!!
「グッ!!?」
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