雨の色づいて消える朝

2/7
前へ
/15ページ
次へ
「雨か。うるせえから窓閉めとけ」 古びたソファに座って、朝だというのに酒をかっくらっている、銀短髪の汚い男がそう言った。 テオは男に言われるがままに、少し高いところにある古い磨りガラスの窓を、一生懸命に閉めた。 途端に薄暗くなる、寂れたアパートの一室。 遠くなった雨の音と、男が酒を飲む音だけが聞こえる。 テオはそのままどうしたらいいのか分からず男の方を見たが、男は視線を合わせることもなく、ただ酒を飲んでいるだけだった。 テオはどうしようもなくて、そこにあった椅子にぽつりと腰をかけた。 しばらくそうして静寂に包まれていると、部屋の外から階段を上がって来る音が聞こえた。 「……来たか」 男がそう呟いた。古いドアが重く、ギィと開く。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加