永遠などない

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それから彼とはよく喫煙所で居合わせるようになった。短い時間でしかも他に人がいるので話し込むことはなかったが、私にはそれで十分だった。ただ一つ私には気になっていることがあった。あの後、あの彼女とはどうなったのかということ。彼の指を見るとどこにも指輪ははめられていなかった。だが、今は指輪を身に着けない人もいると聞く。だから、確証はなかった。子供の時のあの気まずい別れから、幾度となく思い出すあの言葉。 ―ずっと一緒にいられるさ。何があっても乗り越えて見せる。 彼はまだ、永遠を信じているのだろうか。 ある金曜日、私は自分のミスの後始末をするために8時ごろまで会社に残っていた。やっと終わらせて外に出ると、外は土砂降りの雨。台風だった。いつの間にか季節は夏になっていた。私は外の嵐で更に湿度が増した熱い空気の中で、どうやって帰ろうかと考えていた。スマホで確認すると案の定電車は一時的に運転見合わせをしているようだ。どこかで時間を潰すか。 「ひどい嵐だね。」 後ろから声をかけられた。まさかと思って振り返ると、困ったような顔の彼が立っていた。 「お疲れ様です。電車も遅延になっているようですね。」 「だから、早く帰りたかったんだけどね。君も今帰りなの?」 「はい。残業で、今終わったところです。」 「お疲れさま。さて、どうしようかな。」 私は長身の彼の横顔を見つめた。まさかここで会えるなんて。できれば少し彼と話したいな。まるでその声が聞こえたように、彼は私に顔を向けた。 「もしよかったら、少し飲む?どうせ当分電車も動かないでしょ。」 私は、内心あっけにとられながらコクコクと首を縦に振って頷いた。
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