永遠などない

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「別れよう。」 その一言で私たちの2年は終わった。電話で別れを告げられるだけまだましだろう。最近はLINEのメッセージで別れを切り出されることも多いようだから。たとえ相手の浮気が原因であっても、私はそこに誠意を感じて納得した。 「わかった。」 それだけ返事をした。それ以上何を言っても仕方がない。壊れてしまったものは元に戻らないのだから。電話を切った後、私はタバコを咥えベランダに出た。春の夜風はまだ寒い。でも今はその冷たさが心地よかった。タバコに火をつけゆっくり吸ってから煙を吐き出した。就活が始まった昨年から吸い始めたタバコが、波立った私の心を落ち着かせてくれる。思っていたより悲しくなかった。出会った時から別れの予感はしていた。だから付き合うときは、いつも別れが来る前提で彼と距離をとる。そのせいかもしれない。私はそっと煙を吐き出した。少しだけ芽生える悲しみを一緒に吐き出すように。いつも恋人と別れた後に思い出す顔がある。 ―永遠に一緒にいられるさ。何があっても乗り越えて見せる。 いつもは眠たげなその人の目が、その時ばかりはキラキラと幸せそうに輝いていたことを覚えている。でも私は思い出すたびに、遠い記憶の中のその人にこう言うのだ。 ―ほら、永遠なんてなかったでしょ? と。私の方が正しかったと子供のように威張るのだ。まだほとんど吸っていないタバコを、当てつけのようにベランダに置いた灰皿にこすり付けた。明日は就職先で社会人として初めての出勤だ。 「よっしゃッ」 気合を入れるように両手に拳を作って、思いっきり体に向かって腕を引いた。これで大丈夫。私は急に寒さを感じて震えた。思いのほか長く外にいたらしい。風邪でもひいては困ると、私は慌てて部屋の中へ駆け込んだ。
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