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小5の時、結衣とお化け屋敷に行った。 町内会の旅行で行った地元の遊園地。県外の人はきっとほとんど知らない、田舎の片隅の遊園地の、そのまた片隅にあるお化け屋敷。 「中はバイトのお兄さんとかだよ」と可愛くないことを言いながら、結衣は出口まで終始楽しそうに笑っていた。 俺は情けない悲鳴をあげっぱなしで、恥ずかしながらちょっとチビってさえいた。「剛は怖がりだねぇ」と差し出してくれた結衣の手を、「そんなんじゃねえよ」と振り払った。 高校1年の文化祭で俺達のクラスがお化け屋敷をやることに決まったとき、思い出したのは5年前の夏の事だった。 あの時振り払った手は一度も繋げないまま、何も変わらないまま、俺達は高校生になった。 今ならここぞとばかりに結衣の手を握るのに。 いや、今ならあんな、情けない姿は絶対に見せないけど。 一番前の席で、あの日と同じ顔で、女子達と楽しそうに笑っている結衣を見ながら、思った。 文化祭なんてかったるい。高校生にもなってお化け屋敷かよダッセー。 俺は楽しげな結衣とは裏腹に、そんなスタンスを装って話し合いにはほとんど参加しなかった。 どんなお化け屋敷になるのか、どんな仕掛けをするのか、そんなことはどうでもいい。 俺は結衣の言う「バイトのお兄さん」にさえならなければいい。お化けに扮して真っ暗な教室で客が来るのを待ってるなんて、絶対に嫌だ。
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