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「で、剛は何の係になったんだっけ」
帰りのバス停で結衣が訊いてくる。
「俺、看板係。当日動くのだりーもん。他のクラスのとか見たいし」
「あ、あたしも準備だけ。お化けの仕掛け作って、あとフランソワ連れてくるの」
「…フランソワって、あの」
「そう。叔母さんが買ってくれた金髪のお人形」
知ってる。小学生の頃はよく遊びに行った、結衣の部屋の本棚の上にあった人形。フランス人形ってやつだろうか。結衣はフランソワと名前をつけて可愛がっていたけれど、俺は…
「剛も怖がってたじゃん、フランソワのこと」
「はぁ?!誰が!いつ!」
思わず抗議の声を上げる。
確かに怖かったけど、ガラス玉みたいな目がこっちをずっと見ている気がして、立ち上がって動き出しそうな気がして、正直怖かったけど、結衣にそれを言われるのは気恥ずかしくて嫌だった。
「えー?違った?」
「ちっげぇよ、バカ」
怖がりだねぇ、と言われたあの日から、結衣に弱味を握られているような気がして、なんだか素直になれない。
頼りない奴だと思われていそうで。男として見てもらえないんじゃないかと思って。
そろそろ何か、変わるきっかけが、あればいいのに。
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