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教室の後ろの扉から入ると、ロッカーの上にズラッとこけしが並んでいる。はっきり言って不気味だ。
「わー、雰囲気出てるね」
並んだこけしを見て、結衣が言った。
時々不気味な効果音が流れてくる中、暗幕で仕切られた通路を進んでいく。
角を曲がると、机の上にフランソワがいた。ぼんやりと下から照らされて、うっすら微笑んでいる。
「おお…我が子ながらなかなかいい仕事するね」
「母ちゃんかよ」
ツッコミを入れて気を紛らわす。
見慣れた人形。何も怖いことなんかない。
そう思いながら通りすぎようとしたとき。
ガタガタガタッ!!
フランソワの座っていた机が大きく揺れた。
「ひゃっ」
結衣が小さな悲鳴を上げて、俺の袖を掴んだ。
机が揺れた時よりも大きく、俺の心臓が跳ね上がる。
「バ、バカ、誰かが机揺らしてんだよ」
平静を装って、結衣に言い聞かせる。
「わ、わかってるけど」
「だいたいこれお前のフランソワだろ」
「そうだけど、びっくりしたんだもん」
そう言って結衣が口を尖らせる。
「山口あたりがやったんだろ?後でやり返すか」
わざと軽口を叩いて先に進む。
フランソワ、お前、本当にいい仕事したぜ。
引かれた余韻を袖に感じながら、思う。
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